ゲアリー・マーカス「脳はあり合わせの材料から生まれた」(原題「KLUGE」)
脳はあり合わせの材料から生まれた―それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ
- 作者: ゲアリーマーカス,鍛原多惠子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
脳が祖先型・反射型システムと熟慮型システムに分けられ、問題は二つが併存することではなく、その相互作用の仕方にあるという観点が面白かった。
以下は脳のクルージ性ゆえに生じる非合理性を避けるために役立つ13項目。
1.可能な限り代案を探る確証バイアス及び動機付けられた推論(確証バイアスが証拠集めに関するバイアスであるなら、これは推論が動機によって歪められるというバイアス?)を避けるため。
2.問いを書き直そうフレーミングによるバイアスに注意する。
3.相関が必ず因果関係を意味するとは限らないと考える
4.サンプル数を忘れない
5.自分が衝動的であることを見越してあらかじめ計画を立てる
オデュッセウスは、マストに身を縛り付け、もし自分が縄を緩めろと言ったならばなお強く縛るように命じた。
「誘惑される意志」の双曲割引。
. . . , but the hearts of men are easily corrupted.
―ガラドリエル様の声のナレーション
6.目的を設定するだけでなく、予備案も準備する
祖先型・反射型システムは抽象的な目的を扱いにくい。祖先型・反射型システムが慣れ親しんだif-then形式(「フレンチフライを見たら、避ける」)に書き直すと成功率が著しく改善する。
7.疲れているときや、気が散っているときには、できれば重要な決断は下さない疲れているときは反射型システムに頼りがちになる。十分な休息と完全な集中を。
8.つねに代償に対する利益を見定める機会費用。
9.あなたの選択は抜き打ちチェックを受けるものと心得る
「自分がした選択の根拠を示さねばならないと知っている人は、そうでない人に比べてバイアスを持たない傾向にあるという研究がある」
10.自分と距離を置く「仏教は、一切のことはその瞬間にはとても重要に思えると説く」。「即時的な思考と距離を置いた思考の両方」をする。「[結論]少し待ってみよう。明日になってもまだ欲しかったら、それは大事なものかもしれない」
11.印象深いもの、個人的なもの、逸話には用心するある研究では、学生はコンドームについて統計的に有力な研究よりも個人的体験談の方を信じる傾向にあった。
12.どちらかに決めるビュリダンのロバ
13.理性的であるようにつとめるそう言い聞かせるだけでは無力だが、上述のテクニックを使えば役に立つかもしれない。
バランスよく証拠集を集め、推論バイアスに留意し、長期的目的に沿った選択をするように訓練する。